2025年12月11日更新
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本日はマンションの「管理費・修繕積立金の滞納」ついてのお話です。
少し前の話になりますが、「管理費をだいぶ滞納しているのですが、買取査定に響きますか?」というご相談をいただきました。金額にして60万円以上、2年以上は滞納していたようです。
このマンションの管理費・修繕積立金の滞納問題は複合的な問題があるケースがあり、その解決には関係各所の様々なご協力が必要になります。
なぜこういったことが起こるのか、この背景には「外国人投資家による未払い」や「所有者の経済的理由」などがありますが、今回は後者のケースを取り上げています。
弊社で過去に取り扱った事例では、ほぼ「任意売却」絡みの売却案件でした。
任意売却とは「不動産を売却してもローン残債を0円(全額返済)にできない時に、その抵当権者の許可・合意を得て不動産を売却すること」を指します。抵当権者としてはローンの一括返済を望みますが、不動産を売却することでその残債部分を小さくすることができます。ローンは残ることになりますが、そこから改めて無理のない範囲(例えば今までの支払いが月10万円だったのが月1~2万円にする、など)で債務者に支払いを約束してもらえれば、抵当権者としては「競売で売却する」よりは良い結果に繋がるケースもある様です。

この「任意売却」は【ローン返済が滞る】ことで生じます。「任意売却」は交渉事ですので、何もしなければ「競売」になります。「競売」に至るまでにはそれなりの期間(だいたい半年以上)が必要ですが、競売の手続きが開始されてから完了するまでにもそれなりに時間(こちらもだいたい半年以上)が掛かります。
競売を行うと抵当権は原則消滅しますが、任意売却の時と同様に残債が残る場合もあります。その場合は、もう抵当権がないので給与差押などの別の訴訟が必要になります。そういった部分も含めて、債権者・債務者の関係で一度でも話し合いが持てる任意売却には一定のメリットがあると思います。
マンションの管理組合としては、競売まで事が進むと更に相当の期間の滞納が生じてしまうので、大変悩ましい問題だと思います。競売を経ても滞納金に関しては支払われません。競売の売却代金は抵当権者に向かうだけです。
「滞納金」があるマンション売買の懸念点は、この「滞納金」をどう解消するかに尽きます。
他方で、「競売」にしても「任意売却」にしても、マンションの売買に関しては、滞納金があっても所有権移転の障害にはなりません。あくまで売主と買主の約束事(売買契約)は金銭の授受と所有権移転ですので、管理組合にも管理会社にもその売買に絡む事はできませんし、止めることもできません。
「滞納金」はあくまで売主個人が管理組合等に有する負債ということになります。滞納金に関しては、売買契約書上でも「マンション全体の滞納金がいくらあります」と記述がある程度で、売買金額には関係のない、言わば簿外債務の様な取り扱いです。
売買契約書に記載のない負債の滞納金に関しては、不動産の買取業者もその取り扱いについては各社様々です。
ある買取業者は、滞納金解消は売買契約の目的ではなく、そもそも売買の当事者ではない管理組合に支払う理由が売買契約書上にない(名目がない)ということで、取り扱い不可という判断をするところも少なくありません。
そもそも手付金や売買代金で解消できないの?とふと疑問も出てきますが、通常の売買なら売主の判断でそれは可能です。しかし様々な面からここに取引の安全性を考えると、その解消手続きには仲介会社の積極的な関与が重要だと思っています。契約方法・決済方法も色々なパターンが考えられます。例えば手付金0円で契約し、決済時までに滞納金額を確定させ、決済時に全て精算する方法や、手付金を仲介会社預かりにして、決済時まで保管しておく方法もあります。

ところがこの売買が「任意売却」だと、手付金や売買代金による解消は原則できません。基本的に任意売却は、その不動産を売却しても融資残債額に満たない場合の措置ですので、売買を通した金銭の取り扱いも当然抵当権者との合意事項になっています。手付金はその不動産の売買代金の一部ですので、「任意売却」の売買契約時の手付金は仲介会社が預かり、そのまま抵当権者に渡ることが多いです。契約時でも売主は一切の金銭の授受がありません。
「任意売却」ではその売却金額から抵当権者が認めた経費(例えば仲介会社の手数料、引越費用など)しか控除されず、滞納金まで債権者が面倒をみてくれるケースはあまり見たことがありません(業者買取だと尚更かもしれません)。
一方で管理組合は滞納金問題の解決を図る目的で、個別に売主を訴えることを検討しますが、時間がかかる上に確実性の面で不安があります。その為、任意売却や競売の場合だと大体は次の買主にその負担を求めてきます。
根拠としては、マンションの区分所有者は、そのマンション管理組合に加入しなければならない、とする管理規約です。この加入を、滞納金解消と共に認めるとする判断(有効かどうかは別です)で交渉してくるケースが多いので、「任意売却」などの場合だと滞納金は売買契約とは別に対応しなければならず、買主にとっては負担が増えることになります。
要約しますと、滞納金問題は通常の売買であれば手付金等で先に解決する術がありますが、任意売却等の場合にはそれが使えなくなるので別の費用として支払う可能性がある、という事です。
基本的には売買代金の中で解消するのがベストですが、ローン残高次第では滞納金を含めて売却計画を考えていかざるを得ません。これには売主側の協力も必要で、慎重に売却計画を立てていく事をお勧めしています。
またこういった案件は、買取案件に流され易い面があります。その際には、本当にその金額でしか売れないのか、という疑問も常に持っていてほしいと思っています。任意売却は売却してもローン残債が残る状態です。仲介会社などはその売却価格の根拠として様々な不動産買取会社から買付書などを取得して、それを基に抵当権者などと交渉をします。つまり恣意的に任意売却になるよう促される隙が、残念ながらこの過程の中にはあるのです。
弊社ではこの様な問題に対して、正直に、誠実に対応をしています。まずは適切な不動産評価から、次に如何に高く売れるかを考えていき、それでも難しい場合に初めて関係各所の協力を得ながら話を進めていきます。
滞納は増えれば増えるほど解決が難航していきますので、早めの対応が望ましいと思っています。




