少し前の話になりますが、表題の通り実際に揉めてしまった時のお話です。
先に夫を亡くしてしまった奥様(祖父母の代)が、子供4人(親の代:内2名は既に他界。4名とも既婚で子どもあり:孫の代)を残してお亡くなりになりました。相続財産が多少あり、それを巡って紛争が起こってしまいました。
その亡くなられた奥様は古くから日本でよくある「長男が実家を継ぐ」という思想の持主で、それを従前から子供たちによ~く言い聞かせていたので、子供たちは基本的にはその通りに相続財産を分けていきました。相続財産を分配すべく、相続財産を調査してある程度の金額がわかってくると、子供4人のうちの、既に他界されている子どもの子供、つまり孫にあたる子たちが「相続財産は法に則り分配していくべきだ」と主張してきました。亡くなられた子供の配偶者はそこまで思っていなかった様ですが、相続の権利は「孫」にあります。その孫が権利を主張するなら、止められる術もありません。そこで紛争が起こってしまいました。
孫の内の一人は会計士でしたので、尚更こういった事には私情よりも法令遵守精神が上回ったのかもわかりません。子供たちは良くても、その孫たちにはまた別の理念・信条があります。この件はそういった事を教えてくれます。
なお、この件には「遺言書」の有無の記載がありません。つまり遺言書がなかった場合です。遺言書があれば防げたかと問われますと、それもケースバイケースです。例えば遺留分減殺(現在では「遺留分侵害」と言います)の部分を主張されてしまったら遺言書があったとしても防げる(一応の対策は打てますが、100%とは言えません)ものではありません。現代は特にそういった法令遵守が当たり前の時代・価値観で、昔ながらのやり方・自分の親もこうしていた、は阿吽の呼吸にならなくなってきたのだと思います。
親族間の関係性も昔ほどではないご家庭もあると思います。孫たちに祖父母が頻繁に会えていたとしても、諭すことは孫たちの年齢によるところもあるでしょうし、親は祖父母の想いを伝えることはできても、事例の通り先に親が亡くなられている場合では(亡くなられた年数にもよりますが)簡単ではないように思います。
それでもご自身が願う相続を実現したいのであれば、やはり「遺言書」を書き残し、遺言書の「付言事項」で自分の想いの丈を相続人に伝えていくことは有効である可能性があります。できるなら生前から相続に関する事を予め相続人に伝えておくことも有効かもしれません。どちらにしても、特に重要なのはその「遺言書」を公正証書で残しておくことです。
他にもテクニック的なお話だと、例えば遺留分侵害額請求がされた場合に、遺留分の負担をする順番を遺言書で指定することはできます。また相続させたくない相続人を廃除するように遺言書に書き加えることもできますが、これは家庭裁判所の判断もありますので、確実ではありません。
相続で紛争が起きてしまうと本当に時間が掛かります。これは本当になんとかならないかといつも思います。今回の事例のようなお話はよくあるかもしれませんが、それでも3年ほどの時間が掛かってようやく落ち着きました。
相続のお話は奥が深く、今回は代襲相続で起きてしまった相続の揉めたお話でした。次回はまた別の相続問題のお話をさせていただきます。