2025.8.17

■事例紹介■「息子が家を出ない!:介護のために同居編」

以前弊社で取り組んだ案件のお話です。

高齢のご夫婦がとある一軒家に住まわれていました。そのご夫婦には息子が2人おり、そのうちの長男がまぁまぁの破天荒な方だったそうです。その高齢のご夫婦は、子育ても終わりゆっくり余生を過ごしていましたが、ある時、長男から、両親の老後の面倒をみるから実家に住まわせてほしい、長男としても生活費の節約にもなるから、とのことで当初は両者の合意をもって同居(権限としては使用貸借)を開始しました。

ただ同居生活を続けていくうちに、その長男の酒癖が悪く粗暴な一面もあり、とても一緒には暮らしていけない!として、同居から1年程度で高齢のご夫婦は長男に退去を求める様になりました。長男からは酒癖が悪いことや粗暴な一面はなく、そんな謂れのない非難に足しては慰謝料を請求するとして、退去を含めて一定程度の金銭を要求してきました。高齢のご夫婦は仕方なしにその金銭を支払い、それをもって同居の関係は終了となるはずでした。

ところが、その金銭の授受があったのにも関わらず、長男は家から出て行かなかったのです。

そんな中で高齢のご夫婦も加齢の為、どこか施設に入る必要が出て来ました。しかしこのまま長男が家にいる状態だと、相続が発生すると長男は実家に居座り続ける可能性があるのではと思い、売却を検討し始め、そんな折に私のところに話が入ってきました。

この場合、賃貸借の関係は勿論のこと、使用貸借の関係も認められないとすると、この長男は不法に占拠している不法占有の状態であると解釈されます。ただ銀行は、この不法占有者がいる物件には原則融資できない、としています。

これでは案件化できないものですが、交渉の結果、長男の退去時期が明確になればなんとかしましょう、ということで案件化致しました。

当初、退去交渉は難航するだろうなと考え、契約後の引渡前から退去交渉を開始致しました。その退去交渉を進めた結果、なんと直ぐに出ていくとの連絡がきました。

引渡前に長男が出ていくと知ったご夫婦はとても喜んだのと同時に、長男が出て行くなら実家を売るのをやめる、となりました。

結果としては時期的なものもあり手付金の倍返しで収まることになり、私としては仕事がなくなってしまうので残念に思いましたが、このご夫婦がこれほど喜んでいるなら致し方なく、これも何かのご縁かなと思いました。

もちろん退去確認もしっかりやらせてもらいましたが、今回の件、事前に対策もいくつかできそうに思います。例えば家族信託の設定や配偶者居住権の設定を予め遺言などに記述しておく、というものです。配偶者居住権は所有権の移転を配偶者にする訳ではありませんが、登記をすることで第三者に対抗することができるとされています。遺言作成時に法律家を入れて指南いただくことで万が一の時の保険となるのではと考えられます。
ただ実務的には、これを残された相続人たちで遺産分割協議に取り纏め、相続人として皆さんのお名前で登記申請しないといけないとされていますので、家族間で揉めている様な状況次第では(家族)信託の方が安全かも分かりません。これにも前もった準備や費用が必要になるので、難しい部分もあるのですが…。
なお配偶者居住権がある不動産は流通し辛くなる可能性が高くなります。所有権の移転が済んだとしても、そこに居住権を主張できる方がいる、という不動産になるからです。それはそれで残された相続人たちは困ったなとなる場合もありますが、結論から言いますと、この配偶者居住権は放棄(または合意解除)できます。しかしこれはこれで価値のあるものを手放す行為でもあるので、場合によっては建物所有者に対して贈与税の課税対象(配偶者が対価を得て合意解除した場合には、配偶者に譲渡所得税が課せられます)になるとされています(配偶者が亡くなる・配偶者居住権の期間が終了するなどを理由にした配偶者居住権の消滅では課税関係は生じないとされています)。

弊社ではこの様な訳あり買取を多くこなしています。このような事例では売買になる前からお手伝いできることがあるのではないかなと思っています。何か不動産に係る不安や心配事がございましたら、なんなりとご相談いただければと思います。できる限りのお手伝いができればと思っています(お仕事になるケースの方がありがたいですが…)。

最新の記事Latest Posts

LINEお問合せはこちらから